スカイハイ / 高橋ツトム

スカイハイ 新章 1 (ヤングジャンプコミックス)

スカイハイ 新章 1 (ヤングジャンプコミックス)

殺された後に殺された人間が選べる選択が三つある。

1.死を受け入れて天国に 旅立ち再生の準備をする

2.死を受け入れずに霊となって現世を彷徨う

3. 現世の人間を一人 呪い殺し、地獄へ行く

さあ、あなたはどれを選びますか?

それが『スカイハイ』の主人公が問いかける問いだ。

一人一人の人生があって、一人一人のストーリーがある。

そのストーリーを強制終了させるのが殺人だ。

自分を殺したものを、不条理な殺人を行うものを果たして赦せるだろうか。

作者はこの前の章で「祈り」を書き、今度は「つまらない殺人を行うもの」への「怒り」からこの漫画(新章)を書き始めたらしい。

「不条理な殺人」への「怒り」

具体的な例としては、山口県光市・母子殺害事件がその一例ではなかろうか?

テレビで悲痛に訴える男性の姿を僕ははっきり覚えている。

「少年を刑務所から今すぐ出してください。私がこの手で殺します」

こんなことを言っていた気がする。

何年前の出来事だろう。

彼の「怒り」は「悲しみ」はテレビというメディアの媒介を感じさせなかった。

僕の心にその言葉はいつものテレビの言葉より「リアル」に訴えかけた。

でも

もしかしたら、本当は彼は祈っていたのではないか。

テレビに出るまで一人で祈っていたのではないか。

しかし

「祈り」がやがて「怒り」に変わったのではないか。

届かない祈り。

叶わない想い。

いつの間にか、「祈り」が「怒り」に変わる。

いや、「祈り」と「怒り」は本当は同じものなのだ。

程度の問題だ。

彼は「祈」って「怒」っていたのだ。

どうしようもないことだったのだろう。

月日が経ち、先日この男性がテレビに出ていた。

未だに法廷で「祈って」(怒って)いた。

僕は思う。

この男性は救われない。

加害者少年に極刑が下されたところで、彼は救われない。

裁判なんて本当は関係ないはずだ。

でも、きっとそれくらいしか彼には出来ない。

精一杯出来ることが加害者に「死んで」もらうこと。

加害者に反省してもらうこと(どうやら加害者の少年は全く反省していないらしいが)。

こんな酷いことがあるだろうか?

僕は祈る。

このようなことが起こらないようにと「祈る」。

僕は怒る。

このようなことが起こらないようにと「怒る」。

僕にはどうやらこれくらいしか出来そうにない。

法は彼を助けられないのだから。

人を助けられるのは、人だけだ。