モンパルナスの灯 / ジャック・ベッケル

本当に久々に映画の記事を書いてみるわけで(もしかしてフィッツジェラルド劇場以来か?多少は映画も観てるんだけどなあ・・)。

貧困と病苦のうちに三十六歳にしてモンパルナスに果てたエコール・ド・パリの異色画家モディリアーニの晩年を描くこの作品は最初「歴史は女で作られる」「輪舞(1950)」のマックス・オフュルス監督によって計画され、「愛情の瞬間」のアンリ・ジャンソンとの協力によって脚本が書かれたが、オフュルスの急死によって、「怪盗ルパン」「現金に手を出すな」のジャック・ベッケル監督にひきつがれ完成されたものである。ベッケルの意志により、元の脚本に大幅の改変が行われたため、ジャンソンは激しい論戦の末、自分の名をタイトルから削ってしまったという曰くつきの作品である。原作はミシェル・ジョルジュ・ミシェルの「モンパルナスの人々」。「歴史は女で作られる」のクリスチャン・マトラが撮影を監督し、音楽はポール・ミスラキ。出演者は「夜の騎士道」のジェラール・フィリップ、「恋ざんげ」のアヌーク・エーメ、ドイツ出身のリリー・パルマー、「眼には眼を」のレア・パドヴァーニ、「殺人鬼に罠をかけろ」のジェラール・セティとリノ・ヴァンチュラ、「ノートルダムのせむし男」のマリアンヌ・オスワルドなど。製作はラルフ・ボーム。

どうにも「傑作だ」と言われたら行かなきゃダメな気がして、そして去年くらいに新文芸坐ジェラール・フィリップ特集をやっていた記憶があるけど行かなかったので、丁度いいやと思い渋谷で降りてふらふらと行くわけで。行ってきましたBunkamuraル・シネマ。

金曜の夜ということもあってか、客の入りは上々。少し遅めに行ったので後ろの方は年配の方々が占めており、しょうがないので3列目へ。相変わらず前の方には「映画好きなんですけど。ってゆーか、てめえ、オレ、映画好きなんだよ、こら、分かってんのか」みたいな人たちが座っていて恐いなあ、と思うのだけれど、右斜め前に座っていた若い男がこれ「映画バカ」っぽくて、上映中にふと彼を見てみたら「これ泣く場所じゃないんじゃない?」という場面でおろおろ泣いており、「困ったやつだぜ」と思いつつ僕もぼろぼろ泣いてるわけで。

だってさー、いつの時代も男ってのはダメなわけで、コイツはバカだなあ、バカだなあ、と思うんだけど「バカなのは自分だ」ということに気づき情けなーい気分になって遣る瀬無い気分になって。

とにかく、塾(人が集まって絵を描くところ)でちらりちらりとお互い相手のことを見て気があることバレバレなとことか*1、そこでお互いの絵を描いちゃうとことか、その女の子に想いが通じてはしゃぐこのバカ男を見ていると「恋!恋!!」って思うわけで、献身的な妻とバカ夫という構図はありきたりなのだけど最後の最後まで泣きながら見たのでした。

確かに傑作でした。フランス映画は久々だったのだけど、これは比較的見易いので普段フランス映画見ない人でも眠たくならないと思います。帰り道に女性たちが「最後がフランス映画っぽいよね」と言っていたけど、確かにそうかもしれない。あと、エンドロールが短すぎて涙を拭く時間がなくて赤い目してぎゅうぎゅう詰めのエレベーター乗って恥ずかしかった。映画館が暗いのは人が自由に涙を流せるようにするためだと思っている僕にはエンドロールの短い映画はちょっと辛いな。あー、モジ!アンリ!!

*1:このシーンでトリュフォーの『アントワーヌとコレット』のワンシーンをずっと思い浮かべていたのだけど。そして今度トリュフォー特集ヴェーラでやるらしいのだけど。