みんな元気。 / 舞城王太郎
「行ってらっしゃい。頑張ってね」
と私は笑う。
「おす、じゃあ行ってきます」
と手の平をさっと上げてから父はロケット噴射で空にバシューンと小さくなる。杉山家は雲の彼方でもう見えない。父の姿も見えなくなる。
私はそのまま一人で空に落ちる。
三方から唯士と姉と昭が私のほうに飛んでくる。三人には透明魔人は誰の姿に、何の形に、どんな気持ちに見えただろう。それとも空から落ちる私を助けるのに夢中で透明魔人なんて誰の目にも映ってなかったりして・・・えへ。三つのレスキューを待ちながら、私は空を落ち、目をつぶる。
愛されている。
舞城の長編は二冊目。三年位前に『阿修羅ガール』を読んで以来。そして読んでみて思い出したこと。それは、舞城の小説は最後まで読まなければいけないということ。
はじめの方は非常に面白かったのだけど、段々飽きてきて、というのも舞城読む人なら分かると思うのだけれど、この作者はぶっ飛んだことばっか書いてどうにも分けわかんないはちゃめちゃな事件が起きるのでついていけなくて、やれやれ、と思っていたのだけれど、ラスト数ページがどうしようもなく良かった。最後の一ページを読み終わった瞬間に「やられた!」と泣き叫びながら壁に本を投げつけた。これだから舞城を読むのは止められない。