学問バトン

今更でごめんなさい。。

色々ありますが、せっかくSAKさんから渡していただいたので本当に今更ですが、なんにせよこれはやっておきますです。他の問題は他の問題なのであります。

では、どーぞ。

●あなたの専門・専攻・得意教科は?
曖昧ですが一応「複雑系科学」になると思います。学部まではコンピュータサイエンス情報工学のようなものを中心に学んでいたので(学科の方針は違ったのですが)その分野の知識をベースに生物学、人間科学、社会学あたりにアプローチしたいなあと思っています。具体的には最近はシミュレーションを用いて人間(エージェント)の間の相互作用(例えばコミュニケーションとかメディアとか)を可視化(若しくは数値化)して*1、そこから他の分野(社会学現代思想、計算機科学、生物学、人類学等)の知見を絡めて人間存在(の一側面)を記述できたらいいなあ、と夢見ています。大変不器用なので実験は苦手です。妄想が最も得意です。


●あなたは、どのようなテーマに関心がありますか?
まずは何より人間と生きものに関心があります。人間という存在がずっと不思議でたまりません。生き物が「主体的(自律的)に生きている」ということの切実さについて考えたりもしています。
また、僕の抱えている問題は哲学における認識論や存在論に絡む問題を孕んでいるようで、さらには言語学的な問題も絡んでいるような感じで、といった感じで様々な分野に首を突っ込んでいます。
あと、「自分は本当にこの世界に存在しているのだろうか」という問いは幼い頃からずっと持っています。このことは、僕の中では「自己」と「他者」(もしくは世界)の関係性*2という問題、さらには「生」と「死」の関係性という問題として展開されています。「90年代的」なムードを引きずっていることからも(「キレる17歳」、「酒鬼薔薇事件」、「オウム事件」等を10代で経験した年代ですし)、社会学的なアプローチの必要性も強く感じています。また、同時に「9.11」も大変衝撃的で*3、そういった意味でもやはり90年代半ばから00年代初めの過渡期の時代に10代を過ごしたことが今の自分に大きく影響を与えていると思います。この衝撃が影響して大学一年生のころ(ちょうどイラク戦争真っ只中)は国際関係論みたいなことにも首を突っ込んでいたわけですが、結局自分が知りたいのは「戦争やテロを引き起こすような人間というのは一体何者なのだろうか」ということに気づいたので、国際関係論や政治学からは離れていくことになりました。
理系に進んだのは単に数学が好きだったから(結局数学は専攻しなかったけど)。でも、おかげで研究のためのツール(武器)は沢山手に入ったし、工学を専攻したおかげで「役にたつこと」の重要性に気づくことも出来ました。*4


●あなたは、なぜその専門・分野を選んだのですか?
頭のおかしい人が多いから(笑)。あとは、既存の科学の枠組みが窮屈で納得がいかなかったのですが、複雑系科学が既存の科学(特に還元主義)に反論する姿勢に共感できたのと*5、この分野の何でもアリな感じが自分っぽいかなあと思ったから。領域侵犯して暴れるにはちょうど良いだろうと思い選びました。科学の分野で「科学」というその分野自体を自己反省的に考えているところも魅力でした。


●あなたが最も影響を受けた人と、その理由を挙げてください(複数人可)。
(あまりに露骨で恥ずかしいので変な表記方法を採用します。お二人ともそれなりに顔見知りなので。)

昔から理系の分野だけの知識で一体何が分かるのだろうかと疑問に思っており、学問は退屈だと思っていた*6ときに理系と文系の分野をまたいで活躍しているこんなヤバイ人がいるのかと大変驚きました。本格的な小説まで書いてしまうあたりはやはり感服せざるをえないです。

  • K村タダマサ先生(社会科学者)

同じく理系の分野でうらぶれていた時に出会い、随分と助けてもらいました。学部生のころの僕の人生相談の相手です(笑)大変教養にあふれたユーモアたっぷりのすばらしい先生です。先生の研究室に遊びに行っては本棚を漁り、構造主義ポスト構造主義、社会科学(特に情報社会学*7文化人類学認知科学の分野についてあれこれ教わりました。先生に会ってから人文系の学問の知識がぐっと増えた。今でも社会学ナウい本とネット上のナウい知識・サイトを仕込んでくれています。もう四年目の付き合い。長い。


●あなたが影響を受けた本とその理由を、何冊か挙げてみてください。

ほとんどが大学二年生のとき(三年前)に読んだ本ばかりです。

生命論からメディア論までカバーするこの学問領域の横断の仕方に衝撃を受けました。今でこそ現在の(人文系・理論よりの)学問の流行・歴史、および過去に「現代思想」が生き生きしていた頃(ポストモダニズムの全盛期ですか)のことを知っているのでこの本に書かれている内容にそれほど驚かないのですが、オートポイエーシスもろくに知らなかったときに読んだので大変衝撃を受けました。「研究者になろうと思うやつの気持ちはわからん」と言っていた人間が一瞬のうちに「研究したい」と思うようになり、大学の図書館にこもった夏はもう三年も前のことです。



<ぼく>と世界をつなぐ哲学

<ぼく>と世界をつなぐ哲学

冒頭、こんな文章ではじまります。

 学生の頃、ぼくは自分が宇宙の妖怪じゃないかと本気で考えたことがある。<ぼく>とは何か。<ぼく>とは誰か、なぜほかの違う星や国や場所ではなく、ここに、この<ぼく>として生きているのか。こういう問いに悩まされていた。みなれた漢字でも、じっとみつめていると、どうしてもおかしい、しらない漢字にみえてくることがある。同じように、ぼくがうまれたときから<ぼく>でありつづけたはずのこのぼくについて、考えれば考えるほど、だんだんわからなくなってくるのだ。

「おなじだ」と思い、すぐにレジに走り、一晩で読みました。ずっと苦しかったものが少し楽になり、後ろのほうで紹介されている本の名前をメモし、その年の夏は大学の図書館にずっとこもることになりました。上の本と同時期に読んだのです。



読書術 (岩波現代文庫)

読書術 (岩波現代文庫)

僕の読書の仕方はやはり加藤周一的です。この本の中の「本を読まない「読書術」」というチャプターは今でも参考にしています。



[rakuten:book:11556760:detail]
他者論は色々読むのですが、結局大澤真幸氏の影響が一番大きい気がします。他者論の展開の仕方が面白い。僕がちゃんとした文章を書くときに堅苦しい書き方をするのは彼の影響です笑。

精神の生態学

精神の生態学

この夏影響を受ける予定です笑。ずっと読みたかったのですが、いよいよ読み始めました。科学を志していて、途中から文化人類学へ進むだなんて僕っぽい(笑)


●入門者に、その分野の「入門書」として一冊お勧めするとしたら何を薦めますか?

    • 複雑系入門』 (著)井庭 崇, 福原 義久

「昔流行った(今でも流行ってる?)複雑系って何だろう?」と思い立ったらこの一冊。うちのボスも載ってます笑。一冊ならこれ。どういう研究者がいて、何をやろうとしている(していた)かということが分かります。

●あなたが考える、その専門・分野の「武器」はなんですか
何でもアリなところ。どんな分野の話をもってきても基本的には怒られないかんじです。周りから評価は誰からもされることはありませんが笑。


●他人に「君、大学では何を研究してたの?」等と聞かれた場合、なんと答えるようにしていますか?
「複雑すぎて言えません。」と。


●あなたがその専門・分野に関して、一般の方に知ってもらいたいところは何ですか?
科学は万能ではないということを知っていただけたら幸いであります。あと、この分野の有名人は変わった人が多いので変態を探しに首を突っ込んでみてください。


●あなたがその専門・分野に今後期待することはなんですか? あるいはあなたがその分野で達成したい目標はなんですか?
人間やこの世界について深く考えて、そして「わかんねーわ」と呟きながら死んでいければそれで良いです。

*1:勿論完全には出来ないからいくらか工夫が必要なわけですが。「メディアは存在しない」笑。キットラースティグレールが先日「メディアの存在論」という題目で色々話してましたね。

*2:コミュニケーションや秩序問題、メディア論等

*3:学校から帰って居間で流れされている映像を見て数分間映画だと思っていた。

*4:「役にたたないこと」ばかりやっていると淘汰されるということに気づいたりとか笑。世渡り下手なので、いい経験になりました。

*5:ただし、これは多くの場面で言われているように、複雑系科学が既存科学を真っ向から否定して革命的なことをもたらしたわけではなくて、あくまでこれまでの科学があってこその学問分野であると思います。

*6:その頃は学問の「が」の字も分かっていなかったのですが。

*7:昔はよくマーク・ポスターやポール・ヴィリリオ、ヒューバート・ドレイファスなんかに傾倒したものです。大して詳しくないですが。。