Haptic Literature

文学の触覚

@写美

マイジョウ×chenさんの作品を見に。キーボードがどーんと置いてあって、それがかちゃかちゃ動いていて、画面にさまざまな大きさの文字が並ぶ。小説がタイプされるのかと思っていたらマイジョウのニチジョウみたいなのが書き並べられていた。それにしても勝手に動くキーボード、不気味で素敵だった。

マイジョウも良かったし他の作品も素晴らしかったのだけれど、そうはいっても松浦寿輝穂村弘松浦寿輝の作品が思いのほかよくて、壁につらつらと作品が書かれているのだけれど、人々が長いよねこれと通り過ぎていく中、全て読んでしまった。松浦寿輝って『花腐し』みたいな暗い(?)作風の人なのかと思っていたのだけれど、猫が主人公のある夜の物語で、これは面白かった。そして巧い。これがプロの作家なのかとほれぼれするような描写が続く。文章を読んでいるだけなのにこれほど知覚に訴えかけられるとは、というくらい巧みな情景描写。ああ、世界が青い、とためいき。

続いて穂村弘。以前から気になっていて、詩集を立ち読みなどしていたのだけれど、ここでの出品作品「火よ、さわれるの」も秀逸。ああ、なるほど、そうか、ことば、ことばの世界に住んでいたのだった自分は、とはっとさせられる。上の写真にあるみたいに、机の上に手をかざすと照明が掌に文字を映しだす。映しだされた文字は手の動きにあわせてついてくる。ことばで何かに触れようとする試みが何かを書くという行為であるとしたら、そのことばそれ自身を触れようとすることは何を意味しているのだろうか。それもやはりあちら側の世界になんとか触れてみたいという想いであるのだろうか。

久々にアートに触れて楽しかった。アートが好きで楽しかったのか文学が好きで楽しかったのかはよく分からないけれど。たまには美術館には行かないといけない。