さまざまな現代作家の短篇を収録していて、今まで名前は知っていても読んだことのない作家が多く収録されていたので買ってみた。

特に、蜂飼耳と古川日出男に興味があった。

どれも短くて読むのに十分もかからない作品ばかりなので適当に拾い読みをしてみている。

今のところ読んだ作品の評価はこんな感じ。


<良かった>
蜂飼耳   「繭の遊戯」
古川日出男 「あたしたち、いちばん偉い幽霊捕るわよ」

<まあまあ>
三田誠広  「彼女の重み」
吉田篤弘  「曇ったレンズの磨き方」

<普通>
高橋源一郎 「凍りつく」
橋本治   「関寺小町」
片岡義男  「目覚まし時計の電池」

<ダメ>
石田衣良  「おねがい」
星野智幸  「雛」


なんというか、いつまで経っても石田衣良はダメだなあ、と思う。これに収録されている作品も相変わらずダメだった。

「家庭の事情で風俗で働くことになった女の子とその友人の主人公がいて、女の子が風俗で働く前に最初のセックスの相手を主人公に頼み、主人公はそれを受け入れる」

という話。せめてどこかでひねりを効かせてくれればよいものを、いかにもな展開で終わっていくというどうしようもなさ。本当に、石田衣良の魅力は全然分からない。

あと、星野智幸も面白くなかった。

高橋源一郎はいつものとおり。性に始まり性に終わる。そして、最後の最後で高橋節で終わる、という展開。

三田誠広の「彼女の重み」は大して面白い話でもないのだけれど、ついつい読んでしまった。ものごとを重く考え過ぎているせいでうまくいかない美人の女の子とその子に惹かれる男の子の話。ラストでの「あなた、あたしのこと、好きでしょ」「前からわかっていたわ」の台詞が恐ろしい。ホラー小説としては傑作。

蜂飼耳は、期待していたのだけれど、結構おもしろかった。仕事もせずに「何か」をしているおじさんと幼いながらもそのおじさんに対して好意と悪意の両方の感情を抱く主人公の話。主人公が愛情を抱きつつその対象に憎悪を抱くそのアンヴィバレントだけど不安定ではないはっきりとした感情をうまく書いている。

古川日出男も面白かった。29歳のOL四人組が”最後に29歳になる友人”の誕生日に、幸せを求めて運気を上げてくれるという「木に生えた幽霊」を捕まえに行くという話。馬鹿馬鹿しいのだけれど、そもそも占いだとか血液型・生年月日・手相で相性がどうだとか世の中の女の人たちが夢中になっているものというのは本当は馬鹿馬鹿しいもので、でも小馬鹿にするのではなく、いかにもなOLの会話(給湯室で恋愛の話とかね)を軽いタッチで書き綴る。結局世の女性ってのはこんなもんなのだろうな*1、と微笑ましかった。

*1:「あたしたち、いちばん偉い幽霊(幽霊というのは男ってことだね!)捕るわよ」という台詞は、ごくごく普通の女性のごくごく普通の願望なのだろう