街中でつづいてく暮らし

勢いづいた雨のひとつぶひとつぶが水たまりに撥ねる瞬間をぼうっと見ながら吸う煙草はキャスターのロング。

今年はよく雨が降る。

文化村の前のドンキホーテの黄色い灯りが眩しい。外国人が雨宿りをするために狭い電話ボックスに二人で入ってふざけあっている。カメラがあれば撮るのだけれど、壊れたそれは自宅の机の上だ。

信号が青に変わる瞬間にいっせいに色とりどりの傘が動き出す。壊れた傘すらもっていない僕はパーカーのフードを頭にすっぽりと被り足早に横断歩道を渡る。白いところは踏んだらだめだよ。きみのルール。僕は守らないけどね。

ケータイを取り出してメールを確認すると液晶画面に照らされた雨粒が赤に黄色にとてもきれいで内容は確認せずにその粒をじっと見入った。


金曜日の夜の渋谷は人が立ち止まることを許さない。スーツを着た男の人や胸元の広く開いたドレスを着た女の人とすれ違いながら雑踏の中で一人であることを感じる。香水のにおいがきつい。目的地を一瞬忘れる。

目的も目標もときどき解体されてしまい見失ったものはいつまでたっても取り戻せない。時間はうまく戻ってはくれないし、うまく進んでもくれない。



土曜日の渋谷の街だって同じだ。うまく笑えない人には優しくないし、きちんと日は暮れる。休日の裏側で毎日誰かが生活しているのだ。

吉野家では今日もあの子が働いていて、松屋ではきみが働いている。


旅に出よう。


暗くなると毎晩そう思う。