Money can't buy you back the love that you had then.

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 クリップスプリンガーは、『愛の巣』を弾きおえると、椅子
に坐った身を振りむけ、当惑して薄暗がりの中にギャッツビー
の姿を探し求めた。
「ぼくはぜんぜん練習していないんですよ。弾けないって言った
でしょう。ぜんぜん練習し・・」
「そんなにしゃべるなよ、親友」きめつけるようにギャッビーが
言った「弾きたまえ!」
「朝(あした)にも
 夕(ゆうべ)にも
 おいらには楽しみはない」
(訳注 オットー・ハーバック作詞ルイス・A・ハーシュ作曲の
ミュージカル『メアリ』よりのヒットソング『愛の巣』より)


グレート・ギャツビー』フィツジェラルド 野崎孝

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何かしら楽器を弾ける人を純粋にうらやましく思った日曜日。蒲団の上に寝転がって朝陽が差し込む東向きの窓から青空を眺めながらホットチップが演奏するマーヴィン・ゲイの「セクシュアル・ヒーリング」を耳元から流し込んでいたら、いつの間にか眠ってしまっていた。せっかくの日曜日が台無しだ。

どうにも集中力が下がってきていて、このままではマズイぞ、といった感じになってきているのだけれど、どうしたことだろうか。人が出来ることというのは本当に僅かなことだけで、その僅かなことがらを積み重ねることが出来たときはじめて大きなことが出来る、ということはきっと誰もが知っているけれど、とはいえなかなか目にすることが出来ない体験だ。ひとつのことをやり続けることの大切さについて父親と語り合った週末の金曜日は本当に疲れていて、父親の泊まるホテルのある大塚まで電車を乗り継いで向かったのだけれど、結果としてはお互いいい話が出来て、疲れていたけれど結構しゃべることとなった。相変わらず父親は「男なら夢を追わんかい」といったことを言うので頼もしいのだけれど、同時にはやく孫が見たいと言うので困ったもので、そうだねえ、と言葉を濁しておいた。もう少し自分のやりたいことをやりたいのだよな、それは兄貴に頼んでよ、と心の中で呟きながら別の話題へ。父親の新しい会社のことや研究者ってのは何をやってるんだ、という話。研究者にも色々いるからねえ、と相変わらず支援してもらっているにも関わらずなかなか説明できないので困ったものだ。基本的には父親の次の仕事の話だとか前の仕事の話だとか兄の話だとか日本経済の話をした気がする。ひとつのことをやり続けることは大事だが、いろんなことを知識として持っておかないとダメだ、と言われて、そこらへんは教養学部の大学院生ですから、と返答。でも教養ってお金にならんよ、と。父親は、そんなことはない会社にいても教養がない人間は深い話が出来なくてダメだ、と言っていた。

その日は自宅に帰るとあまりに疲れていて次の日は蒲団に入ってから14時間後に目が覚めた。論文とパソコンを持って渋谷へ。渋谷はクリスマスムード一色で、今年もまたこの時期か、と一人ふらふら本屋やHMVで時間をつぶした。どうにも心の底からリラックスできるような精神状態ではなく、渋谷の街を歩く人々を観察することにしたのだけれど、それにしてもこんなにたくさん人がいるけれど何を考えて生きているのだろうか彼らは、不思議だ不思議だ、と不思議ちゃんぶってみた。相変わらず渋谷は若者の街で、何だかんだで苦手なので中目黒か青山にでも行こうかと思ったけれど体力がなく諦めた。イチマルキューの前の交差点の近くとブンカムラの前の交差点の近くで人間観察をしていたのだけれど、本当に若い人たちの若さには圧倒される。まあ、たぶんボクの方が年上である確率は結構高いのだけれど、とはいえまだボクも若いのでいかんいかん、と。でも、だって、髪とかすごいんだもの、ギャルの女の子の。なんかモコモコと頭の上に盛られていて。個人的にはさらさらの黒髪が好きだな、と。そういえば最近雑誌の表紙を飾る蒼井ゆうがイチイチかわいい。

そしてよく分からないまま気づいたら日曜日になり、その日も終わっていた。ホットケーキとフランスパンを食べただけ。もう12月。時間はもうあまり残されていない。


John Mayer - No Such Thing

Jason Mraz - The Remedy

晴れた日曜日の朝に聴きたい二曲(実際、そういうときによく聴く)。