no title

季節は巡りに巡ってついに秋。寒空はいくぶん気持ちを塞ぐが、土曜日は学部の時の友人のKの結婚式の二次会に出席していた。

誰が来るのだろうか、と思っていたが、参加者の5分の1くらいは知り合いで、久しぶりに会ったSといくらか最近のことを話したりしていた。

Kは相変わらず気儘に仕事をしているらしく、Aは周りの人たちに振り回されながら、Sは「やってられない」とかぼやきながら毎日ハードな仕事をこなしているらしい。「お前はどうしてるの?」とTから訊かれて、「ふらふらしてる」とか冗談めかして言ってみたら、「相変わらずだなあ」という顔をされたので、「相変わらずなんだよ」という表情で返事を返した。みんな、相変わらずなのだ。


ケーキを切ったり、ブーケが飛んだり、そんなシーンのひとつひとつを眺めながら、なんだか他人事のようで、彼らと自分はどこかで別々の時間軸に沿って生き始めたのではないか、などと考えていたけれど、本当はそうではなくて、別々の時間軸で生きていた人たちが、たまたまあのタイミングに集まって、いろんな話をしていただけで、たぶん、これからずっと彼らの時間軸や生活軸のようなものと自分のそれらの軸が交わることはないのではないか、なんて少し感傷的な気分にもなった。


帰りの電車でAが「みんな結婚するじゃん、俺だけじゃん」とか騒いでいて、Sと一緒に「みんなじゃないから笑」となだめながら、「Aはこういうところは変わってないね。気にしなきゃいいのに」と笑っていた。

代々木駅に着いて、「やばい、代々木じゃん、降りなきゃ」とドタバタ電車を飛び降りていく友人達の姿をぼうっと眺めていたら、電車の中に置き去りになってしまって、Kが、「××、降りれる!?」と訊くので、「大丈夫だよ、俺は次の駅で降りるからさ、みんなと違う駅だから」とか言ってみるのだけれど、その頃にはドアはしっかりと閉まってしまっていて、小さな声で話しかけても聞こえるわけもなく、次の駅まで漱石の『硝子戸の中』をぼんやりとながめて過ごしていた。数分後に到着した新宿駅は、妙に若い人が多かった。そうだ、今日は土曜日だ。夜が明けて、日曜日が迫ってくるのだ。