部屋の明かりを付け、初めに目に入ったのは机の上に置かれた3つのリンゴ。

今朝家を出るときに途中まで齧った跡が少しだけ変色している。

3つのリンゴがそれぞれ一つずつ齧られていて、何だか不憫な気がした。

確実に一日過ぎた。

どうしようもない喪失感とこれから続く毎日に対する恐怖感はいつまで経っても拭えない。

何が僕を待っているというのか。

<何を>僕が待っているというのか。

テレビをつけて暫しの時間を過ごす。

知らない間に一人で笑っている自分に気づき、どうしようもなく辛くなる。

きっと明日も明後日も一人で、僕が死んだ後も墓石が一人で笑い続けるのだ。

階段をコツコツ登ってくるハイヒールの音が玄関の方から聞こえる。

コンコン。

乾いたノックの音が冬の空気の乾き具合を教えてくれる。

冬は毎年ここに来る。