重力ピエロ / 伊坂幸太郎
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/04/01
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 330回
- この商品を含むブログ (630件) を見る
「黒澤さんにとっての、『恰好良い』の定義を教えてください」
「俺は定義という言葉が嫌いなんだよ。二度と使わないでくれ」
『重力ピエロ』 伊坂幸太郎 p.365
「おまえはさっき、『世の中では悪いこと』だと言ったけど、世の中っていったい何だよ?」
「世の中は世の中だ。社会と言ってもいい」
「サッチャー首相はこう言ったよ。『社会なんていうものは存在しない』」
「殺人犯を放置するのは法律に反するだろ」
「法律なんて弁護士のためにあるだけだ」
「秩序を乱すことになるんじゃないか」
「秩序なんて見たことがない」
「倫理観が痛むことになる」
「俺の倫理観はさっぱり」
「道徳は?」
「倫理とか道徳なんて犬に食わせてしまえばいいんだ」私は、春の前にいる愛らしい柴犬に指を向けた。
『重力ピエロ』 伊坂幸太郎 p.448
久々の伊坂作品。
遺伝子やらゴダールやら頭文字が絡み合ういつものような群像劇であります。
伊坂幸太郎は文体がスタイリッシュだから良いのではなくて、良いからスタイリッシュなのだ。
そんなことを痛感させられるこの本は、ある意味むちゃくちゃで、ある意味切なくて、親子の愛情物語であって、ハードボイルド探偵物語であって、恋愛小説でもあるのだと思う。
僕のまわりではたしかに重力が消えた。