死神の精度 / 伊坂幸太郎

いや、今まさに読んでいるんですけど。。

 「前から訊きたかったんだが、恋愛とは何だ?」私は思い切って、その質問をぶつけることにした。「いつも分からないんだ」


 萩原は半分立ち上がりかけていたのだが、その姿勢のまま、可笑しいことを訊きますね、と、また表情を崩した。「千葉さんも彼女がいるのに」


「萩原はどう考えているんだ?恋愛とは何だ」


「それが分かれば世話ないですよ」彼はそう返事をした。「でも、たとえば」とつづけた。「自分と相手が同じことを考えたり、同じことを口走ったりするのって、幸せじゃないですか」


「同じことを?」何だそれは。


「たとえば、同じものを食べた後で同じ感想を持ったり、好きな映画が一緒であったり、同じことで不愉快さを感じたり、そういうのって単純に、幸せですよね」


「幸せか?」


「大きく言ってしまえば、そういうのは全部、恋愛の範疇じゃないかって、僕は思うんですよ」と萩原は笑った。


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「恋愛で死神」(『死神の精度』より)伊坂幸太郎

「昔、観た映画にですね」と弁解するように、言った。


「映画?」


「こういう台詞があったんですよ。『誤りと嘘に大した違いはない。五時に来るといって来ないのはトリックだ。微妙な嘘というのは、ほとんど誤りに近い』って」

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「恋愛で死神」(『死神の精度』より)伊坂幸太郎

昔観た映画のっていうのはゴダールの『女と男のいる舗道』のようです。

結局、好きなんじゃん、ゴダールw