Good-bye(グッドバイ)

目覚まし時計の秒針にうながされて訪れた、朝。

まだ着かぬ足元の、不確かで、やわらかな 地面を烈しく叩きつける雨音の強さに、おどろき、気づく。
高い密度で満たされた重い頭が細い首の上にひとつ。一人用のベッドの上で、ゆっくりと宙に持ち上がった。
続いて、肢体が。

急ぎすぎては、いけないのであった。
連続した時間の、離散的な時間の、ひとつひとつを大切にしなければ、何処にもたどり着くまい。
焦燥感に抗う身のこなし。余裕のある身のこなしで、ひとつ、ひとつ、こなしてゆくのであった。
迫りくる時計の針をうまくかわして、ひとつめの、ふたつめの、踏み出しを続けるのであった。

熱い喉元から吐きだされた甘い息が、家々の庇から滴り落ちる雨滴に、ほのかに溶け込み、白く、濁る。

それは次の季節の音連れなのであった。

それは別れの予感なのであった。

Rie Fu - Life Is Like A Boat