333ノテッペンカラトビウツレ

もやもやしたら高いところにのぼればいいのさ、そんな単純な気持ちで登ってみた東京タワーの展望台からは東京の街がぐるっと一面に見渡せて、西の空には夕日がゆっくりと沈みかけていた。せわしなく動く小さな自動車の影、人の影を目で追いかけては、彼らの過ごしてきた日々を想像した。過ぎてゆく電車の中に、車の中に、人の中に、収まりきらないほどの時間や記憶が詰め込まれている。彼らは明日何を思うのだろう、と考えてみるが、想像なんて出来やしないし、きっと僕とは永遠にすれ違い続ける人たちばかりで、少し残念なような、ちょっぴり安心したような気持ちになった。

六本木の駅に向かう途中で、がんばれるかなあ大丈夫だよね、なんて独り言をつぶやいていたら、突然泣きだしてしまいそうになってしまって、思わず笑った。厳かな大使館だかなんだかの警備員さんに声をかけられたから「こんにちは!さようなら!」と元気な声で返した。そういえば小さな頃からうれしい悲しいに関係なくすぐに泣いてしまう子だったのだけれど、最近はずいぶんと泣かなくなった。一人で映画を見るとすぐ泣くけど。さすがにもう二十代も後半戦なのだから泣いているわけにもいかないのだけれど、たぶん、きっと、辛いことがたくさんありすぎて開き直ったのだとおもう。すこしは大人になれたのかもしれない。まだまだ子供の部分ばかりだけれど。優柔不断なところ、なんとかしなきゃなあ。