100701



深夜に自分の書いた論文を眺めていた。自分自身と向き合うために書いた論文は拙い解析と拙い言葉で組み立てられているけれど、どれをとっても自分が考えたことで自分の言葉で、こいつを次にどこに連れて行ってやればいいのだろうか、と少しだけ途方に暮れている。


大学院生のあいだに指導教官の先生に言われたことでいくつか覚えていることがある。一つは「もっと研究を大事にしなさい」ということで、これは当時の自分にとっては研究にだけ当てはまることではなかった。片っ端から面白そうなことに首を突っ込んで好きなように考えて、そのままで。学部生のときも自分の学科の必修科目よりも他学科の授業にばかり精を出していたが、今思えばもっと必修科目や実験にじっくり付き合っていればよかった、と思う。きっと欲しいものと必要なものの区別がついていなかったのだろう。結局手に入れたものの中で手元に今でも残っているものは僅かにすぎない。それでもそうした行為の過程で得られたのは物事を見抜く力で、最近はようやく「これだ」というものをそれほど悩むことなく信じることができるようになってきた。本当にいい仕事を「いい仕事だ」と評価したいし、自分がよいと思うものを信じてみようと思う。


今日は夜に文化村で「オーケストラ!」を見てきた。映画が始まってからずっと泣いていたのは「レスラー」以来だろうか。かつて抱えきれないくらいの名声を得た名匠マエストロも今は劇場の清掃員。そんな彼が29年前の「約束」あるいは「運命」のようなものを果たすためにパリでのオーケストラの演奏を目指す。ロシアから「約束の地」パリへたどりつくまでのドタバタ劇はまるでカウリスマキの「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」のようで、涙と笑いが入り混じる。そしてオーケストラホールに集う人々の祈りはアルトマンの「今宵、フィッツジェラルド劇場で」のようで。主人公がかつてボリショイ交響楽団を率いていたときより手を組んでいたマネージャーの共産主義者に対して「オーケストラこそ共産主義だ!」と説得するシーンでロシアの歴史を思い出したり。29年の時間を経て果たされる人々の思いに胸がつまり、エンドロールが流れた後に映画館の外に出ると、目を腫らした大人たちがロビーでざわついていた。「行け、前にすすめ!」と応援したくなるような、主人公やその周りの人々の姿を今思い出しただけで、目頭が熱くなる。笑えて、泣けて、大切なことが詰まっていて、本当に傑作だった。こんなに泣いたり笑ったりしたの、どれくらいぶりだろう。


今日は帰宅時間が遅くなってしまったため、自炊を諦めオリジン弁当で夕食を済ませた。それでも豆腐とみそ汁は食べておいたので、明日もオッケーなのだと思う。もう眠たいので眠る。やるべきことをやろう。