浮世でランチ / 山崎ナオコーラ

浮世でランチ

浮世でランチ

 小さい頃は、この世界に不慣れで、いつも不安だった。自分の周りにあるものが一体なんなのか、うまく認識できなかった。テーブルもコップも触ると硬いけれど、周りの人たちが同じように感じているのかどうか、確かめられない。言葉をうまく扱えないので、自分の感じていることを、人に伝えることもできなかった。
 周りの人と同じ世界に住んでいる実感が、なかったのだ。

 私はふと、ミカミさんのことを、思い出した。
 宗教観も、本も音楽の趣味も合わせられない。もう仕事は一緒ではないし、この先どうしたいということもない。目的から離れて人と関わることに、意味ってあるのかな?
 あるのだろう。この世界で生きているとき、話してみたいという純粋な欲望だけで、人と関わるときがある。

あまりに好きな作品であるため、語るのはやめて引用だけにしたい。人と関わると自分の人生は少し思うようにいかなくなったりするのだけれど、それでもその思うようにいかないことから思いがけない素敵なことが現れたりもするのだということを久々にしみじみと感じた。本当に好きな作品だ。好きだという言葉以外が見つからない(<= 興奮しすぎ!)。