Knocked off course

どうもなにやらまずいなあという状態に入り込んでしまった中でやらなければならない仕事があったりして本当に困ったものだなあといった感じでやれやれ困った困ったと一人考え込んでいたのだけれど考え込んでいても答えは出るわけでもないしあらゆる過去の出来事を思い返しては否定してしまって埒があかない、ということを先日から何度も繰り返していてこのままだとまずいななんとかしなくちゃ、と思って夕方頃に家を出て池袋から山手線に乗り原宿で降りて表参道をすたすた歩きながら考えるのはあんなことやこんなことで、こんなんじゃ外に出た意味がないじゃないかと思いつつも青山のショップを眺めていたらなんだかみすぼらしい自分はここには似つかわしくないよなと思ってどこの店にも入れなくて、ああ結局みすぼらしさというのは内面から湧き出してくるのだなあと思いつつ掌をぐーぱーぐーぱー感触を確かめながらきれいな街並みを歩いているとぽっかりと何もない空き地があってそこから月がきれいに見えそうなものだから「立ち入り禁止」の看板を無視して、ロープを跨いで、よっ、と中に入ると本当にただの空き地で周りはきれいな店々が立ち並んでいるにも関わらず比較的広い面積だから空き地の中には影となる場所もなくて一人でぼーっと月を見ながらカメラ持ってくればよかったなあとかどうでもいいこととか考えていたら少しが気持ちが楽になったから月明かりの下でいつものように肩からぶら下げたショルダーバッグをぶらぶらさせながらコンクリートつま先で蹴って歩いて明治通りまで出て横断歩道を渡って青山ブックセンターに向かった。色々本が出ていたけれど『EYESCREAM』が「ビート&ファッション」特集とかいうのをやっていてケルアックとバロウズギンズバーグがフィーチャーされていたからふーんとか眺めていて、ああそうだよね自分もドロップアウトしたんだったよね、エリートサラリーマンなんて夢見ちゃダメなんだよねとか言い聞かせながら「本当に両親は不憫だなあこんな息子を持って」とか思っているとやはり申し訳ない気分で、とりあえず高校生の頃に見ていた青春映画がドロップアウトものばかりだったのがよくなかったのだろうかとか色々可能性を考えてはみたのだけれど特にクリティカルな理由も見つからないから、まあいいかとりあえずジョン・ローレンス・サリヴァンの服欲しいな、確かナイチチかどっかに売ってたような、とか考えていた。ABCを出て国連大学の前をとぼとぼ歩き、いつものように階段をじゃんぷして青山劇場の横の道を歩いて渋谷のほうへ戻る。渋谷の若者というのは渋谷の若者なのだなあ一体最近の若者は何を考えているのだろかなあとか考えながらタワレコに行って色々試聴して本読んでHMV行って試聴して本読んだ。渋谷の交差点で今日こそ一番に渡りきってやろうと頑張って早足したのだけれど人の流れはもっと速くて自然と取り残された。こうして取り残されるのだろうな、と思って足が止まりそうになったけれど渋谷駅山手線のホームの一番端っこ、電車の一番後ろのところから電車に乗り込みずっと窓の外を眺めながら東京に出てきてから何度も乗った山手線だけれどどんなときに乗っていたかなあとかいろんなことを思い出していた。池袋で降りてメトロポリタン口から地上に出てバス停のところに停めた自転車を取りに行く。自転車に乗っていると春の気配とか夏の気配とかすぐに感じられるのだけれど、ここ数日は本当に涼しくてまさに秋の気配が感じられて少し肌寒く夜は長袖を着ても良いのかもしれないと思った。要町通りを走っていると見慣れない店があって、どうやら新しい店らしくしかも本屋さんだったので中に入ってみるとなにやらお洒落な音楽がかかっており置かれている本は古本だったので何事だろうかこんな場所に古本屋をつくるなんてと思いつつふらふら眺めていたのだけれどそれほどいい本は置いてなくて、でも品揃えは悪くなかった。結局、何か買って行きたい気分というか夜に一人で落ち着いて読める本が欲しいなあと思い1000円だった堀江敏幸の『おぱらばん』という短編集を買った。帰り道に夕食を食べているときにぱらぱらページをめくりながら適当なのを選んで読んでみるとやはり堀江敏幸の文章は素晴らしく美しくて泣いてしまいそうになったからぱたりと本を閉じて楽しいことを考えようとしたけれど楽しいこととかまったく思いつかなくて仕方がないから無心で夕食を食べた。