今年の夏はどうだった?




「君は何年生ですか?」

「1年生」

「ひゃー、若いね。ここの学校?」

「うん」

「僕もここの学校で小学生やってたよ、20年くらい前に。夏休み?」

「そう、児童館に行ってた」

「オレも行ってたよー。卓球台はまだある?」

「あるよ」

「漫画は?」

「コロコロ」

「あの、高いところにネットで登るやつは?」

「閉まってある。小さい子が落ちるから」

「結構高いから危ないもんね」

「うん」

「学校楽しい?」

「うん」

「そっかー。楽しいよな。楽しかったよオレも。毎日遊んでた」

小学校のグラウンドでひとりぼんやりと座っていたら男の子が駆けてきて、突然棒登りを登り始めた。それを見て、「がんばれ」って声をかけていたのだけれど、「がんばるのはオレだろ」とか思って負けじと登って高いところに腰かけていたら、男の子も登ってきた。二人で海を眺めながら「高いところは気持ちがいいねえ」とかぽつぽつ会話が始まって。4時に家に帰らなきゃいけないらしくて、時間がきたら閉まっている門をよじ登って門の向こう側から笑顔で手を振って走って帰って行った。あの子の未来には何があるのかしら、とぼんやりと考えてから自転車を漕いで川に向かった。