三連休


世間は三連休だけれど、なんて前置きを置くような生活からはしばらく離れてぼんやりと過ごした連休。なんとなく覚えていることをいくつか書き留めておく。


豪徳寺にて。先日お祭りをやっていたばかりなのだけれど、たまたま自転車で通りかかったら再びお祭りが。いつ行っても賑やかなのはとてもいい。サーターアンダギーを売っている屋台の前を通って、食べたい食べたいと思うもお腹いっぱい食べ過ぎの胃の状態を鑑みて自粛。道の脇にたくさんの屋台が出ていて、洋服や小物、靴やおもちゃが売られていた。小さな女の子が「あれほしいの。あれほしい」と泣き喚いていて、「オレが買ってあげるよー」とか心の中で呟いたり。そういえば幼い頃にどうしても欲しかったぬいぐるみが買ってもらえなくて(今でも覚えているのだけれど、青いラッコのぬいぐるみで、とてもかわいかったし手触りがよかった笑)母と兄に置いていかれてもまだ泣き喚いて駄々をこねたのだけれど、結局買ってもらえなかったことを思い出した。そのあと駅前のモスバーガーで焼肉ライスバーガーを食べて機嫌を直したんだっけ。あの頃みたいな泣き喚くくらい欲しいものがあまりなくなってしまったのは、幸せなことなのかどうなのか。正直少しよく分からない。


どこだか忘れたけれど、近所で。小さな男の子が父親との会話。

「お父さんのこと嫌いになった」と子供。

「なんで?」と父。

「おもちゃ買ってくれないから」と子供。

「そんなことで嫌いになるなよ」と父。

なんだかお父さんの答え方が素敵だなあ、と思って横を通りすぎた後にくすくす笑ってしまった。そうだよなあ、おもちゃ買ってあげないくらいで嫌われちゃったら困るよなあ、と妙に納得したりもして。そういえばうちの父親はわりと何でも買ってくれて、いろいろな場所に連れていってくれた。何でも、といってもそのころ欲しかったものというのは近所の本屋さんの入り口に置いてあったガチャガチャ(といって分かるだろうか?プラスチックの丸い玉に景品が入って出てくる機械のことだけれど)で、父親に100円をもらってはガンダムの消しゴムをゲットしていた。おもちゃ箱に入りきらないくらいたくさんのガンダムの消しゴムはもうないけれど、よく一人で二つのキャラクターを戦わせて遊んでいた。そういえばあの本屋さんも数年前になくなってしまった。もやもやしていた十代の思い出がつまった場所だったのだけれど。


そして今日は多摩川。特に何の目的もなく国領の駅で降りてずんずん歩いて多摩川まで。途中でお腹が空いて倒れそうになったけれど、非常食のチョコレートで空腹を耐え忍んだ。何もない団地の横を通り抜けながら、親戚の住んでいた団地を思い出したり。とても狭い部屋に4人くらいの人が住んでいて、夜になれば大人が麻雀を始めた。テレビには光ゲンジが写っていて、もしかしたらもっとも幼いときの記憶の一つかもしれない。そういえばファミコンのカセットも買ってもらったし、なんだかよく分からないけれどそこに住んでいた人たちからは色々なものを与えてもらった。今では来年高校生になる子供も家族に加わり、オジサンはいなくなってしまったけれど、結婚式で公民館に布団や毛布を持ち込んで眠ったことやバイクの後ろに乗せてもらったこと、他にもいろんなことを思い出す。

団地を抜けると少し高くなったところを自転車が走っているのが見える。その河原沿いの道のところまで登れば、ほとんど障害物のない開けた場所になり、目の前に大きな川が流れている。釣りをする人、並んで座るカップルや夫婦。上半身裸で自転車に乗っているオジサン(これはギリギリの光景だ!)。斜面に腰を下ろしてゆっくりと川の流れを眺めていただけなのだけれど、とても気持ちがよかった。遠くから流れてくるバーベキューのいい匂い。後ろで通りすぎていく人たちの笑い声。何もないけれど、何もしていないけれど、十分に満たされているよなあ、と深いことは考えずに小一時間を過ごした。

川沿いをしばらく歩けば大きな橋。近くに立っていた看板で駅の場所を確認して、とぼとぼと歩く。お腹が空いた、お腹が空いた、とぐうぐう鳴り続けるお腹に何かを入れようと思って、しばらく駅前の商店街を歩いたあとに入ったラーメン屋さんで醤油ラーメンを頼むと、「お願いね」とやさしい顔をした店主さんがラーメンを差し出してくれた。550円の何の変哲もないラーメン。でもこれがうまいんだよな、とずるずると音を立てて平らげ、店を出て帰宅した。